どうもふしめろです。
さて、ラノベとはどういった書物なのでしょうか? 様々なところでラノベとはこういう物であると主張されていますが、未だに決着がついていないように見えます。
僕自身ラノベとは一体何なのかに興味があったのでいろいろ考えてみた結果、良い結論に達しましたので、ここにラノベの再定義と言う名目で書いていくことにします。
本のジャンルを定義してみる
さて、ラノベ・ライトノベルとは言わずもがなですが本の特に小説の一ジャンルであります。となると今現在どのようなジャンルがあるかを調べると良いかもしれません。amazonからジャンル一覧を持ってきてそれぞれがどのような特徴を持つジャンルであるか、調べてみましょう。
文芸作品
歴史・時代小説
経済・社会小説
ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
SF・ホラー・ファンタジー
ロマンス
エッセー・随筆
古典
詩歌
戯曲・シナリオ
評論・文学研究
伝承・神話
全集・選書
文学賞受賞作家
文芸作品
文芸作品とは見て解るとおり文の芸術というわけで、何に重きを置かれているか考えると芸術に特化していると言えそうです。つまり、文章を扱う技術に重きを置かれているわけです。
この文章は美しいのかどうなのか? が重要視されている世界ですね。
歴史・時代小説
これもまた、見ての通りですね。時代小説は江戸時代くらいのところでなんかやるって感じの小説で、テレビで言うと水戸黄門とか暴れん坊将軍がそれですね。
歴史小説は昔あった事件を元にした小説です。本能寺の変を小説にしたらまあ歴史小説のくくりになるのではないでしょうか?
なので、何に重きを置かれているかと言えば、舞台の描写が歴史的事実と整合性がとれているのか? とかでしょうか?
経済・社会小説
これは、比較的現代の世界で金やら地位やらをネタにしてどうのこうのやると言う奴ですね。
有名どころではこの小説が有名でしょうか?
そうです、半沢直樹です。なので島耕作も漫画ですが小説にしたらここに入りますね。
なのでまあ、風刺的かどうかとか業界の事情がしっかりと描かれているかとかに重きを置かれている感じです。
ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
これいくつもジャンルがまとまっちゃってますが、大本はミステリーでこれは出てきた謎やトリックを解く要素があり、からの派生で謎を追究していくところなどの緊迫感へ特に焦点を当てた物がサスペンスです。
そしてハードボイルドはミステリーなどで比較的人格者に書かれている主人公とか探偵キャラを、暴力的で妥協を許さない完璧人間みたいにした感じです。ゴルゴ13がミステリーに出たらハードボイルドだと思えば正解です。ゴルゴ13みたいな主人公がなんかやるのをハードボイルドだと思っている人もいますが、本当はそうではないです。
なので、このジャンルは基本的に謎があるかどうか? それがきちんと解かれるのか解かれないのか? が重視されますね。
とりあえずこの辺で辞めておきますか。
なにはともあれ、上記を通して僕が言いたいことは、ほとんどの場合、字面から何がこのジャンルで重視されるかが比較的明白か少なくとも想像することが出来るのですが、これは小説の中身に対してそのジャンル名がつけられたからです。
しかし、ライトノベルはその命名経緯を見る以上、そもそも[ジュブナイル」だとか「ヤングアダルト」などと呼ばれていた16-25歳を対象読者とする小説群という言ってしまえばニックネームみたいな物で、これが定義づけを難しくします。
ですが、誰が見てもこれがライトノベルだというのは見れば解ります。
いくら表紙がアニメ調で挿絵が大量に入っていても、表紙が堅苦しい文学作品の体をとってイラストが一枚も無くても、それがライトノベルかそうでないかは少し読めば誰にだって解るのです。
それはなぜでしょうか?
それは、ライトノベルと言うジャンルで重要視されている物が曖昧でも明瞭だからです。
ライトノベルは読み手にとっての面白さを重視する小説
ライトノベルに限らず親愛なる読者の皆様は、幾分か本を読んでいらっしゃるのでこの見出しの文字はいささか不満に思うかもしれません。
ミステリもSFもホラーも面白いのに何でライトノベルだけ面白さを重視されているといえるんだ。
とね。
ですが、よく考えてみてください。ミステリは何が面白いのか? SFは何が面白いのか?*1 ホラーは何が? 時代小説は何が? そう考えていくと、それぞれのジャンルで重視されている物を取り上げて話すでしょう。
しかし、ライトノベルはどうでしょう。ライトノベルの何が面白いのか?
キャラでしょうか? 物語の独創性でしょうか? それとも設定でしょうか?
多分どれも違います。Aの作品に似たようなキャラがBと言う物語と似たような物語でCと言う作品と似たような設定で書かれている、正直マンネリ作品としか言い様のないものがそれら以上のヒットを飛ばしたりします。
そう考えるとライトノベルの面白さが何を指しているのかよくわかりませんが、ただ一つ解るのはライトノベルの世界では他のジャンル以上に面白さが絶対の基準として存在しており、ミステリで書き直しを要求されるレベルで似ていても、ライトノベルではそのまま通ってヒットを飛ばしてしまうことがあるのは、その作品が面白かったからです。
面白さとは<親近感x質の絶対値>
ではここまで僕が主張する面白さとは一体何なのでしょうか?
下の本ではこのように表記されています。
おもしろさというのは<親近感x質の絶対値>の「面積」
本を読むと、ここで言う質とは完成度のことを指しています。文章が理路整然としているかとか、読ませる文章か。と言った文芸、文学に近い要素です。単純明快ですね。もちろんライトノベルと文芸は違いますから、同じレベルで質を判断することは出来ません。
では親近感とは何でしょうか? こと小説に限って言うのであれば、その小説で展開している物事が自分にとってなじみが深い物であれば親近感と言うことになるでしょう。
これらが正しいとすると、なぜライトノベルがアニメ調の表紙や挿絵で文章の形態も似通っているのか、なぜ異世界が流行っているかが簡単に説明できます。
なぜイラストがアニメ調であるかと言えば、そもそもライトノベルの対象読者は16-25歳であり、日本において16歳まで彼らが一番親しみを持って娯楽として消費していた物は何かと考えると、テレビアニメと漫画雑誌っとゲームであると言えます。
そうなってくると彼らを対象として商品展開する場合、アニメ調のイラストを採用すると上記3つないしは2つの要素を併せ持ちやすいので、親近感を覚え手に取りやすくする効果があると言えるでしょう。
次に文章の形態が似たり寄ったりなのは、ライトノベルという物が設定され販売されてきた中で、上記三つから来る歴代の金字塔的ライトノベルからの淘汰圧がかかったからです。 基本的に金字塔的というレベルの作品は誰もが読んでいます。誰もが呼んでいる言うことはめちゃめちゃ売れていると言うわけで、どうしても二匹目のドジョウ的なそれに似た作品が市場に供給されるわけです。そして、読者もそれを望んでいるので似た作品を読み進めていくと、結果的に金字塔に似た作品に親近感がわき、それしか売れなくなるという現象がループした結果が現状の文章の形態なわけです。
そして、最後に異世界物が市場を席巻しているのは、金字塔的作品であるゼロの使い魔とインターネットSS文化*2によるところが大きいです。ネット上でゼロの使い魔SSから培われた召喚テンプレートが徐々に形を変え転移物に派生し、親近感を覚えた世代がライトノベルの想定読者に合致したとき、親近感と質を備えたソードアートオンラインで花開いたというのは言い過ぎでしょうか?
ライトノベルは異世界システムにハックされた
さて、ライトノベルは面白さを重視するジャンルであると僕が定義し、面白さとは<親近感x質>であるという引用をして面白さとは何かを定義しました。
その上で考えてみると、転移、転生、異世界物という要素は自分と同じ境遇の主人公を強制的にファンタジーの世界へ連れて来ることが出来る。異世界は基本的によく見知ったゲームに近い形である。と言う親近感覚えまくりの要素が盛りだくさんであり、これに<親近感x質>の式を当てはめれば面白いに決まってます。
それまでのライトノベル形式が霞み駆逐されるのは当然と言えば当然でしょう。ライトノベルは異世界システムにハックされたと言っても過言ではありません。
ライトノベルは再度ハックされるのか?
最後にライトノベルを書こうとしている人はまず異世界物を書いた方が良いでしょう。なぜなら現段階で読者に親近感を覚えさせる最も早く確実で最上の方法は現代に住む主人公を異世界に飛ばすことだからです。
その手を封じると言うことは、異世界システムで確定発生する親近感を補って余りある質の文章を書けるという自負があるか、異世界システム以上の親近感を覚えさせるシステムを構築できるかにかかっています。もっとも、この方法の一つがスター・システムなのですが、これはすでに知名度のある作品からキャラクターを持ってくる必要があるので一ジャンルを築くほどでは無いと思います。
もし、異世界システム以上の親近感を覚えさせるシステムを構築できた人間は多分次のライトノベルにおいて金字塔たり得る存在となるでしょう。
一体どんなシステムなのでしょうか? 楽しみですね。