the end of my life / nona さんのイラスト - ニコニコ静画 (イラスト)
シェアされる初音ミクと言う概念
どうもふしめろです。
この記事を読みました。
ふむふむ、内容を要約するのは難しいですが、様々なクリエイターが初音ミクを利用しているが、歌える要素というのはどこまで必要とされるのか? みたいな話。と言うか話が非常にふんわりしてるので話のトリガーくらいに考えていただければ。
とにかく、何というか、ダウンタウンが今ほとんど漫才やってなくても引っ張りだこだったり、昭和アイドルがもはや新曲なんか出して居ないのにバラエティに呼ばれまくってたりしている現象に近いかなーとか思ったのでつらつらと考える。
でも既存の芸能人とは訳が違う
さっき、芸能人の例を引き合いに出しましたがこれをそのまま適用するわけに行かないのはわかりきっていることです。なぜなら初音ミクは未だに曲を出し続けているからです。
ダウンタウンが連日新しい漫才ネタをこの世に発表したり、昭和アイドルが当時の歌声で未だに新曲を発表し続けているような物です。しかも、その内容はそのときそのときの流行を綺麗に押さえて、新しいジャンルにもすぐに対応すると言うある意味芸能人の鏡みたいな存在が、我らが初音ミクなのです。
シェアード・ワード(もしくはワールド)としての初音ミク
では何でそんなことが出来るのでしょうか?
おおざっぱに言うと、初音ミクと言う概念を利用してクリエイター達が様々な創作活動を行っているからです。こう言う物をシェアード・ワールドと言いますが、今回の場合はワールドとでも呼ぶべきある程度固定化された存在をシェアしているのでは無く、どちらかというと初音ミクというワードをクリエイター達が個々の解釈でシェアしているのでシェアード・ワードと呼ぶのが非常に近いでしょう。*1
そしてシェアード・ワードと言えばなんと約100年程前からシェアされ続ける大御所がいらっしゃいます。それがこの方、ドン。
The Very Best of Miku Hatsune / blackRainbow さんのイラスト - ニコニコ静画 (イラスト)
違うこっち
九頭龍 / douzen さんのイラスト - ニコニコ静画 (イラスト)
そう、クトゥルフ神話です。
共通点が多い初音ミクとクトゥルフ神話
古めの記事ではありますが、この記事に情報が詰まっております。
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトを中心とする一群の作家達が、自分達が創造した太古の神々や魔導書などの固有名詞を互いの作品で共有していくという楽屋落ち的なお遊びを通し、意図せずして作りあげた架空の神話体系です。
複数の作家が同じ世界観を共有する創作スタイルを「シェアード・ワールド」と呼びますが、クトゥルー神話の場合は必ずしもそうではなく、同じ固有名詞を用いるについても、その背後にある設定や世界観は個々の作家の裁量にゆだねられました。
そのため、私は「シェアード・ワード」と呼んでいます。
ええ、シェアード・ワードという語句はこの記事からの引用です。
この引用を言い換えるとこうなります。
ニコニコ動画のDTMクリエイター(通称ボカロP)を中心とする一群のユーザーが、VOCALOID初音ミクという歌唱ソフトを使い自作の曲を投稿し続けた結果、それを見たその他ユーザーが初音ミクを題材として曲に限らずイラストや漫画小説、その他の歌唱ソフトまで引っ張り上げるなどと言った楽屋落ち的なお遊びを通し、意図せずして作りあげた架空の電脳アイドルです。
複数の作家が同じ世界観を共有する創作スタイルを「シェアード・ワールド」と呼びますが、初音ミクの場合は必ずしもそうではなく、同じ固有名詞を用いるについても、その背後にある設定や世界観は個々の作家の裁量にゆだねられました。
もっとも、開発元も少しはそういう物を狙っていたりニコニコ運営のてこ入れがあったと思われます。ですが、たかだか数社の力ではこれほどまでの大規模な流れを作ることは当時であってもほぼ無理です。
まず複数のボカロP達からの初音ミク作品の供給があり、触発された別のボカロP達がまた作るというサイクルからコンテンツ土壌が生まれて、それを端から見ていた視聴ユーザー達が受け止めて初音ミクの曲じゃ無い別の物を作るという流れが生まれたのです。
つまり、初音ミクは最初ボカロPだけの物でしたが少しするとボカロPから手が離れて、絵師と呼ばれる方々が格好のモデルとして描き始めました。今話題の物を題材にするのは自然な流れです。そして次に動画職人が参入しMVが作られ、MMDが生まれて一部の動画職人の手からまた離れました。こうしてどんどんと雪だるま式に初音ミクに携わる人口が増えていったのですが、それはなぜなのでしょうか?
コミュニケーション・ツールとしての両者
先ほどの記事にはこうあります。
クトゥルー神話は、ラヴクラフトの作品を核としているのは事実ですが、決して彼一人のものではありませんでした。スミスやロングといった作家たちは、ラヴクラフトとあらかじめ示し合わせることもあれば、そうでないこともありました。
こうした作家たちは、ラヴクラフトへの親愛の情を示すため、彼の作品から固有名詞や設定を拝借し、ラヴクラフトもまた同じように他の作家からネタを取り込みました。彼らにとって、クトゥルー神話はコミュニケーション・ツールでもあったわけです。
コミュニケーション・ツール言い得て妙です。確かに当時は初音ミクはニコニコ動画内では一種のアイコンでした。あんまり今は昔したくないのですが、当時のニコニコ動画は動画ランキングがカテゴリ分けせずに一緒くたになった1種類しかありませんでした。まだ動画数が少なく、ユーザーも少なかったから出来た行為です。そしてそのランキングを見ればニコニコ動画内で起きているすべてが分かりました。黎明期には毎夜毎夜に無修正エロ動画が大量にアップされ、紳士の社交場となり翌日の昼頃には朝露のように消えていく時期もありました。まさに太陽日く燃えよカオス。
そんななか、粉雪などドーマンセーマンなどのむっさい顔のサムネイルが並ぶランキングに、燦然と輝く一本の輝くかわいい女の子サムネイル。クリックしないわけが無い。 しかも、発売してからポンポンいい曲が作られていく。そして上記のようにしばらくするとまたさらにネタが振ってくる。すげえかわいいイラスト! 新キャラ来たあああ! このMVすごいんですけど! MMDってなんだよこれ! ええええカラオケ配信決定とか! と、このように参加した全クリエイターが初音ミクと本気で遊んだ結果とんでもないうねりとなってクトゥルフ神話をしのぐ規模で世界に定着してしまったのです。
まとめ
初音ミクの現在の地位はもう盤石です。完全に一人歩きしています。クトゥルフ神話が約1世紀続いている事ですし、それ以上に人が認知しているこの存在は1世紀なんて軽く越えて2世紀くらい続くんじゃ無いでしょうか? DTMの基本教材として末永く愛され続けることでしょう。それに結月ゆかりといったVOICEROIDと言ったものも続々と発売され続けているこの界隈は既に初音神話体系と言って差し支えないのでは?
追記
ここで倉下忠憲氏のつぶやきを引用します。
テクノロジーがコミュニケート可能な人の数を増やしても、僕たちの共感する力がそれに追いついていない。
— 倉下 忠憲 (@rashita2) 2016年5月12日
たぶんこれが初音神話体系とクトゥルフ神話体系の大きな違いでしょう。
過去のクトゥルフ神話でさえ、最大の功労者ダーレスの独自解釈が大きな波紋を読んでいるのです。しかも初音ミクはクトゥルフ神話以上のジャンル的広がりがあり、その解釈摩擦はクトゥルフ神話の比では無いでしょう。
同じワードを持ちつつも解釈が天と地ほどの隔たりがあることもざらでは無いでしょうか?
そういった事態に出くわした際は出来るだけこう思ってください。
「なるほど、そういった解釈もあるのか!」と
後こちらの記事がニュアンスとして言いたいことが似通っているのでオススメ
*1:東方もシェアード・ワードかもしれません